自由を回復する!「心理的反発」を利用した興味深いお話です。

 

もしかすると「心理的反発(リアクタンス)」という言葉は、それほどポピュラーではないかも知れません。

 

心理的反発とは?

 

心理学者のジャック・ブレームが名付けた概念で、

自分に何かの行動をとる自由があると信じている者は、その自由が失われるか失われそうになるとき、心理的反発を感じる。

失われそうな自由、または失われた自由を回復しようとする動機付け状態、

なのです。

 

これまで何度かご紹介させて頂いたシーナ・アイエンガー教授「選択の科学」では興味深い話が掲載されています。

 

教授の同僚の方の話だそうです。

幼い息子をもつその人は、「シェイクスピアの本は、パパの本だから子どもは読んじゃだめだ」と息子さんに申し渡しました。

そして本を浴室の洗面台の下や、収納ボックスの中に隠したのです。

必ず、本が少しだけのぞくようにして。

息子さんは、間もなくそれらの本を探しあて、こっそりと読み始めました。

そして次第に古典に深い関心を覚えるようになったそうなのです。

 

微笑ましい話ですよね。

私たちの日常でも、こんな感じで「禁止されたもの」を欲しがったり、「禁止されたルール」を破ろうとすることがあります。

それが正しいかどうかと言うより、「選択の自由」が奪われたことそのものに反発するのです。

 

さて、もう少し踏み込むと。

「固く禁止する」よりも「軽く抑制する」くらいの方が、より効果的だったりします。

心理的反発を最小限にし、目的(?)を達成できるのです。

例えば、古典的研究として、子どもたちへの抑制研究があります。子どもたちが、ロビーというロボットで遊ぶのを抑制してみるのです。

実験内容は次のとおりです。

実験者は、ある子どもたちに対して、「ロビーで遊んだらかんかんに怒ってお仕置きするよ」と言い、ある子どもたちには「ロビーで遊んだら困るよ」と言うのです。

その後、子どもたちは両方のグループとも、ロビーと遊ばなかったのですが、1週間経ってみて、

強く禁止された子供たちは、前にも増してロビーと遊びたがっていました。

一方、軽く抑制された子どもたちは、前ほどロビーに関心を示さなくなったのです!

子どもたちにロビーで遊ぶことを禁じつつも、選択の余地(自由)を少しだけ残しておくことで、子どもたちの心理的反発を抑えながら、ロビーに惹かれる気持ちを抑えることができたのです。

 

なぜか?

 

軽く抑制された方の子どもたちには、結構複雑なメカニズムが働いていそうです。

このことは、「認知的不協和」という理論で説明できそうです。

すなわち。

子どもたちには、思いと実際の取った行動との間に不愉快な矛盾(不協和)が生じる。行動は過去のもので、もう変えることはできない。そのため、不協和を避けるため、願望の方を変えたのです。「ロビーで遊んでも、別に楽しいという程でもない」と。

まあ、要するに認知的不協和とは、行動と気持ちの一貫性を持たせたいために、気持ちの方を変えるということですね。

 

これって一見奇異な感じがしますけど、別に珍しいことではありません。

ある団体の行動に矛盾を感じながらも、自分の認知の方を修正して、その団体に従い続けることは結構あるのではないでしょうか。

嗜好品と税金の関係なども一例ですね。

 

このような感じで「選択の科学」には、興味深い事例が多々あります。

これは、本書のほんの一例にすぎません。

ご興味をお持ちになった方は、ぜひご一読ください!

 

 

 

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