精神科医の森川さんが大切なものとして捉えた【対話する力】について。「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」

 

前回、岡檀さん「生き心地の良い町」についてご紹介させて頂きました。

今回ご紹介する「その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く――」は、岡さんの研究発表を聞いて大きな衝撃を受けたという、
精神科医の森川すいめいさんによる、5箇所6回に渡る日本の「自殺希少地域」への旅の記録です。

 

森川さんは、クリニックを開業され精神科医として活躍される一方で、ホームレス状態となった方や生活困窮状態にある方への支援活動にも長年携わっている方です。

先程、この本を「旅の記録」と書きましたが、その内容はむしろ、長年の臨床経験や支援経験で気付かれたことを、自殺希少地域を旅し、対話し、観察することで、改めて確認できたり、さらに新たな気づきを得られたという、森川さんご本人の思索が中心のように思います。

岡さんの本のような「研究」に位置するものではないため、統計的な資料はなく、研究のためのインタビューといった感じではありませんが、

長年の臨床経験に基づく知見には、なるほどと思うことが多々ありました。

 

さて、森川さんが訪れた5箇所とは、岡さんが研究対象とされた旧海部町もありますし、青森県の風間浦村、旧平舘村と、広島県の旧下蒲刈村(島)、東京伊豆七島の神津村(島)です。

このうち、下蒲刈島と神津島は、岡さんの本の中にある自殺希少地域の10位以内に入る島です。前回のブログで書かせて頂いたように、自殺希少地域の多くを占める「島」への調査も大切ではないかと思っていたので、本書を手に取った理由の一つはそこにありました。

本書では、1~6章まで各地への訪問・滞在とその際の気付きについて書かれており、終章で「まとめ」のような構成となっています。

この終章こそが、文字通り、この本における「まとめ」「結論」になるのですが、すべてを書くのはどうかと思うので、概要を書かせて頂くと、

大切なのは、「対話する力」ではないかということです。

 

これは、「相手、自然に合わせて柔軟に対話・対応をしていくこと」ということだと思います。

相手の言葉をよく聴き、それに対して自分はどう思うかと話し、そしてまた相手がそれに対して反応する、という対話を行うことが大切だということなのです。

 

森川さんは、この対話に関して、フィンランドのトルニオで生まれたオープン・ダイアローグを参考とされており、私自身もたいへんに興味を覚えました。

 

さて、最後に。

結論として「対話する力」と書きました。

あれっ?これって本のタイトルの「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」ことと大きく矛盾するんじゃないの?と思われますよね。

実は私自身もちょっと混乱気味なのですが・・・

実はこの言葉は、東京伊豆七島の神津島に来ていた若い男性が発したものなのです。

神津島は、親戚関係(血縁)が強い島であり、岡さんの研究結果に合った「ゆるやかにつながる」とは言えない、濃い関係にあるのだそうです。

そんな島ですが、自殺希少地域であるのです・・・

神津島の事実を踏まえての森川さんの考察は、「自分をしっかりと持っていて、それを周りもしっかりと受け止めている地域」が、自殺希少地域だということなのです。

多分、自立した個人個人が、「しっかりと自分の価値観を持った」うえで、対話をすることの大切さを訴えられているのだと思います。

「相手、自然に合わせて柔軟に対話・対応していく」ことが大切で、そのためにはしっかりと個人が自分の価値観を確立していくことが必要だということだと思います。

 


☆【心理学】関連(=全般)の記事も書かせて頂いています。

 よろしければご覧ください!

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