小室直樹氏による、比較宗教学的、歴史学的にイスラム世界・宗教全般について考察する書籍です。 -小室直樹氏の「イスラム原論」-

 

今回は、小室直樹氏による「日本人のためのイスラム原論」についてご紹介します。

 

この本の特徴は、

比較宗教学的、歴史学的に、

イスラム世界(というより、宗教全般)について考察した点です。

 

私はこれまで、小室直樹氏の「宗教原論」「憲法原論」を読ませて頂いたことがありますが、この「イスラム原論」は、これら2つの内容がミックスされたような本である、と言えばよいでしょうか。。。

すなわち、宗教原論の如く、一神教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教を歴史的(系譜的)に考察することを軸としながらも、時に仏教、儒教、道教など、東洋の宗教なども引き合いに出しながら、広い視野から各々の特徴をあぶり出しています。

タイトルが「イスラム」とついているとおり、イスラム教に重点を置いて書かれているとは言え、通読してみると、かなりの分量が世界の宗教の比較・考察に費やされているように思えます。

 

そして、それだけにとどまらず、

憲法原論の如く、キリスト教(プロテスタンティズム)の行動的禁欲の精神が近代資本主義をもたらしたことをウェ―バーの主張を引用しながら語られ、そして、本書ならではのトピックスとして、それではイスラム教ではどうなのか、という点まで考察されています。

 

また、そのような視点で書かれた本ですが、タイトルに「日本人のための」とあるように、この本の主目的はあくまで、我々日本人が、実はよくわかっていないユダヤ教、キリスト教、儒教、仏教や、少々縁遠い世界であるイスラム教を、我々日本人が知らず知らずのうちに身に付けている「日本教」と比較しながら、その違いっぷりであるとか、日本人以外の世界的な宗教の見方(曰く、日本人の宗教観こそ、特殊なのだそうです)などを知らしめてくれる本だと思います。

 

ちなみに、日本教とはどのようなものか?

 

小室氏曰く、

・日本固有の神道をベースにして、仏教や儒教の教えなどがミックスされたもの。

さらには、大安・仏滅などの「六曜」は道教の流れを汲む陰陽道の思想であるし、クリスマスを祝ったりするのも当たり前となっている状況である。何でも呑みこむのが「日本教」である。

・また、日本教では、イスラム教に見られるような厳格な規範はない(日本人は規範が嫌い)。

日本人ならではの行動様式、倫理道徳は持っているのだが。。。一応の道徳はあっても、その定義はあくまでも曖昧である。人間に合わせて、その時代の「空気」に合わせて、行動を縛る規範(といっても、曖昧なもの)は、形を変えてしまうのである。

ということです。

いやはや、一刀両断という感じですね。慧眼です。

 

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