イスラム学の第一人者:井筒俊彦氏による、一歩掘り下げたイスラムの話が分かる本 -イスラーム文化 その根柢にあるもの-

 

今回は、コーランの翻訳はじめ、イスラム学に関する第一人者と言える井筒俊彦氏による、講演会を元にした本「イスラーム文化−その根柢にあるもの (岩波文庫)」についてご紹介します。

井筒氏はこの本の冒頭で、「イスラーム文化の全体を万遍なくひととおりご説明するのではなく、イスラームのもっとも特徴的と考えられるところを幾つか選んで掘り下げてみたい」と書かれています。

 

その言葉とおり、この本の特徴は、

イスラム学の第一人者による、一歩掘り下げたイスラムの話が分かることです。

 

さて、その内容とは?

本ブログにおいても、網羅的に語るのではなく、他のイスラム入門書ではなかなかお目にかからない内容を幾つかピックアップしてみたいと思います。

 

1.イスラーム文化についての洞察

 

イスラーム文化とは、よくいわれる「砂漠の文化」として簡単にまとめられるようなものではない。様々な異なる文化・伝統が絡み合った、複雑な内的構造を持つ国際的文化である。

ただし、そのイスラーム文化を究極的に1つの文化たらしめている要素こそ、宗教・信仰としてのイスラームであり、その根柢にある「コーラン」という書物なのである。

また、イスラームは、商人の道義を反映した宗教ともいえる。

本書の内容の順序を多少入れ替え、意訳した部分もありますが・・・ 何とも歯切れよく、分かりやすく本質をつかんでいる言葉だと思います。

アラビア語で書かれた「コーラン」が、あの広大なイスラームを、(多様な分節はあれども、)1つの文化たらしめていることに驚嘆を覚えます。

 

2.コーランの構成

 

コーランは、預言者ムハンマドに対する神の啓示を、20年に渡って直接記録したものである。

この20年は、前期10年、後期10年に大きく分けることができる。

前半の10年は、ムハンマドがメッカで啓示を受けた時期であり、怖れ、終末論的な内容が色濃い時期である。

後半の10年は、ムハンマドがメディナに移り住んでからのことである。慈悲、慈愛、人間な感謝などが重要なこととして語られている。

到底、これだけの記述では語りきれないのですが・・・一冊の聖典としてのコーランに、時代別にこのような傾向性があることを私自身知りませんでしたので、興味深く読み進めました。

 

3.スンニ派とシーア派の違いなど

 

他書物では、スンニ派とシーア派の違いは大きくない、との記述も見受けられますが、井筒氏曰く、2つはかなり違いがあります。

本書第3章のタイトル「内面の道」に示唆されるように、スンニ派が、「内面の信仰」に加えて、共同体主義、立法主義という外面的な行動も重視するのに対し、シーア派では、より内面的、すなわちコーランに内的な意味を認め、より内面的な意味を重視する傾向があります。

さらに第3章では、神秘主義であるスーフィズムも、内面を重視する流派として説明されています。

※スンニ派が内面を重視しない、ということではありません。信仰ですから、内面が大切なのは当然です。内面と外面の比率が比較的異なる、という話です。

この辺りの記述は、特に他入門書ではなかなかお目にかからないため、結構、目から鱗状態で、興味深く読み進めました。

 

さて、まとめます。

恐らく、順序的には、この本を読む前に、イスラム教入門書などで概略をつかんでおいた方がよいだろうと思います。そのうえでこの本を読むと、一歩進んだイスラム世界の話:イスラム世界の複雑さ、奥深さが実感できるように思います。

既にひととおりイスラム教をご存知の方は、ぜひ読んで見られてはいかがでしょうか。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA