今、密かなブームの「資本論」。むしろ社会人こそ読んでみたい! -池上彰氏の「高校生からわかる「資本論」」-

 

えっ、いまさらマルクスの資本論?

1990年代にソ連はじめ社会主義国が崩壊したのだから、もうマルクスは不要じゃないの?

と思われるかもしれませんね。

 

けれども。

 

今、「資本論」が密かなブームとなっているのです。

なぜか?

ここではまず、「資本論」が主張するテーマについて言及してみましょう。

資本論のメインテーマは、マルクスが生きていた19世紀のヨーロッパの経済状況を分析することで、当時の「資本主義の本質」を解き明かすことなのです。

社会主義や革命のことを取り沙汰されることが多いのですが、そうではないのです。

タイトルも、革命論ではなく、「資本論」というくらいですからね。

主に、資本主義社会における、資本家による、資本増殖の仕組みを解き明かした本なのです。

そして現在、資本論がブームとなっているのは、マルクスが生きていた140年前の資本主義の状況が、まるで今のことを言っているようだ、ということから発しているのです。

 

このようにブームとなっている「資本論」の入門書として、まずはおなじみ池上彰氏の「池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」」を手に取ってみられるのはいかがでしょうか?

この本には、「高校生からわかる」とタイトルが付いていますが、むしろ社会の仕組みが分かっている社会人の方が分かり良いのではないかと思います。

資本論の原文を引用しながら池上氏は、「何でこんな難しい表現をするのでしょうね」「分かりにくいですね」という言葉を連発しながらも、分かりやすく資本論のエッセンスを説明してくれます。

※ちなみに、資本論は3巻で構成されています。池上氏が本書で扱うのは、マルクス当人によって書かれた第1巻のみです。

※また、池上氏の言われる「(マルクスの原書は)何でこんなに難しい表現なのでしょう」という意見(感想?)に100%同意します。必要以上に難しく書くことは変な誤解を生む元ですから、分かりやすいことは価値があると思うのですが・・・どうなのでしょうね。

 

さて、ごく大雑把に「資本の仕組み」についてのエッセンスを書いてみます。

・人間の労働こそが、あらゆる価値を生み出す(=労働価値説)

資本家は、労働力を買い入れて、労働者を働かせ、新たな価値が付加された商品を販売することにより、利益を上げ、資本を拡大する。

・労働者が働いてもらっている給料は、労働力の再生産費など(明日も元気で働くために必要なお金、次世代の労働階級=子どもの教育など、本人の自己啓発などなど)に相応するお金であるが、実は労働者は、この再生産費などを超える「剰余価値」を生み出している。この部分を資本家が搾取しているのである。

資本家は、競争原理の中、自らの資本を増殖させようと、際限のない資本の増殖運動を行い続ける。すなわち、できるだけ多くの剰余価値を産出し、資本家が労働力をできるだけ搾取するのである。

・そのような運動の結果、やがて資本は独占集中化していくのだが、一方で失業者が増えたり、大工場で働く不満を持った労働者たちが団結して抵抗するようになる。

 

まあ、途中、なぜ資本家は資本の増殖のみに心血を注ぐようになるのか、とか、なぜ資本が一極集中していくのか、という点については書き切れていないので、流れが少しわかりにくくなってしまいましたが・・・およそこんな感じでしょうか。

(もちろん、あれだけぶ厚い本ですから、他のことも多く言っています)

 

資本論が書かれた19世紀は、工場、資本家、労働者といった場所、人々が舞台となっています。

21世紀の今日は、第二次産業である工業よりも、第三次産業であるサービス業の方が大規模となり、当時は盛んでなかった金融などが重要な位置を占めています。社会の構造についても、フーコーの言う「生の権力」だとか、現代思想の焦点となっている「メディアの影響力の拡大」など、当時とは大きく状況が異なっています。

なので、特に今後の社会がどのようになるか、という点などは、マルクスが主張するとおりにはならないと思われます。

 

私たちが資本論から学べるのは、池上氏も書かれているように、マルクス主義礼賛とかではなく、資本主義という今の世の中を分析してみることだと思います。

いまの資本主義を「相対化」する、すなわち(工業社会中心ですが)資本主義社会の動き・仕組みについて知り、自分の立ち位置を知り、それとどのように付き合っていけばよいかを考えるきっかけになることだと思います。

そういった意味で、程よく中立的な池上彰氏による本書を読むことは有益なのではないかと思います。

 

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