日本へのヨーガ普及の功労者による「総合ヨーガ聖典」の解説書 -ヨーガ・スートラ(佐保田鶴治氏)-

 

今回は、佐保田鶴治氏による総合ヨーガ解説書「解説ヨーガ・スートラ」についてご紹介します。

まずは、著者である佐保田鶴治氏についてご紹介しましょう。

佐保田氏は長らく大学教授を務められていましたが、定年退官頃(1961年)、インドの方からヨーガの手ほどきを受け、その後、1973年に日本ヨーガ・アシュラムを開設、日本にヨーガを広めていかれました。1986年ご逝去ということなので、晩年はヨーガと共に歩まれたといえると思います。

佐保田氏は、沖正弘氏と並び、日本へヨーガを広めた功労者のお一人だと思います。この本は1980年初版です。

 

ヨーガのイメージ?

 

ヨーガと言うと、身体を柔軟にする体操のようなもの、というイメージがありませんか?

間違いではありませんが、それはヨーガのごく一部に過ぎません。ヨーガには実に多くの流派があり、主に身体を動かす:生理面に着目したのが、ハタ・ヨーガという流派なのです。

この他にも、カルマ・ヨーガ(行為の道)、バクティ・ヨーガ(愛の道)、ジュニャーナ・ヨーガ(智慧の道)など、実に多くの流派がありますが、まあ、ここでは述べないことにしましょう。

そして、今回話題とさせて頂いているヨーガ・スートラは、古典的な総合ヨーガと言えるでしょうね。流派を超えた、総合的ヨーガです。そして、ヨーガとは「つなぐ」とか「結合」という意味があり、本質に繋がる「道」のようなものを指しています。

 

ヨーガ根本教典:ヨーガ・スートラとは?

 

ヨーガ・スートラは、 -成立年ははっきりしないのですが- 2~4世紀頃、パタンジャリ師によって編纂されたと言われる「ヨーガに関する体系的な教典」です。

読んでみて、ヨーガ・スートラは、驚くほど総合的な教えであり、メソッドであるとつくづく感じます。

私が知る限り、最も広い体系の教えの一つと言って良いと思います。

ヨーガには、次のとおり、八部門体系から成り立っています。

・禁戒:        倫理的な禁止事項
・勧戒:        倫理的な推奨事項
・坐法、調気法、制感: 呼吸・身体・意識を整える方法
・凝念、静慮、三昧:  瞑想への道のり

ご覧のとおり、倫理面、身体面、意識面から瞑想に至る総合的な体系なのです。

現代に存在する数々の教えでもそうですが、身体面だけ、意識面だけ、など、偏りを感じるような教えが多い中、総合的で優れた教えだと思います。

その教えは、換言すれば、すべては「如何に正しく瞑想し、心のはたらきを止滅し、真我となり、解脱するのか」という目的に向かう総合的な修練の体系なのです。そういった意味では、意識面の開発が最終目標であり、最優先事項なのでしょうが、そのための総合的な道を開いていることが素晴らしいと思います。

 

そして、留意点なのですが。。。

前述のとおり、ヨーガ・スートラは、やや成立がはっきりとしない教典であり、その内容には、重複部分両立し難い部分(1,2,3章では「意識の止滅」について語られる一方で、4章では「超自然的能力」について語られています)があることは確かです。

佐保田氏、その他の識者が言うとおり、異なる時代の複数の人により書かれたものを編纂した可能性が極めて高いと考えられます。

そのように、一貫性の面ではやや問題があるのですが、少なくとも3章までの意識の開発に関する記述は、佐保田氏の解説と合せて、詳細かつ具体的に書かれており、大いに参考になると思います。(別に、4章のあり方を否定しているわけではありません。3章までに、かなり統一性があると感じる、という話です)

 

最後に。

ヨーガ・スートラに関する有名な本として、もう一冊、スワミ・サッチダーナンダ師「インテグラル・ヨーガ」という本があります。(こちらについては、別記事でご紹介させて頂きます)

佐保田氏は学術畑を歩んだ方だけあり、その内容は歴史的考察など、多分にアカデミックです。そのような構成が好きな方は佐保田氏の本を、もう少し親しみやすい口調でインドの実践者が書かれた本が好きな方はサッチダーナンダ師の方を、選択すればよいと思います。もちろん、できれば両方読んだ方が、比較対象できて良いと思います。

 

今回は、全体の解説ということで、総評的なものとなってしまいましたが、いずれ、各部の詳細について語ってみたいと思っています。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA