人間とは、案外簡単に【権威に服従してしまう】ことを実験で示す -ミルグラムの「服従の心理」-

 

今回は、スタンレー・ミルグラムの「服従の心理」についてご紹介します。

 

ミルグラムのこの実験のことは、社会心理学、組織行動倫理等で学ばれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。結構有名ですね。

この本は「権威への服従」がテーマとなります。

 

服従の本質とは何か?

 

それは。

人が、自分を別の人間の願望実行の道具として考えるようになり、したがって自分の行動に責任をとらなくていいと考えるようになってしまうことにあります。

この実験の特徴は、罰則などの脅しがない(=恐怖によって服従がもたらせるのではない)、すなわち強制がない状態で、自主的に服従する状況を実験で作り出した点にあります。

権威側は、その服従を維持するにあたり、相手が自分の言うことを当然きくものだという、自信たっぷりの態度を示す程度でいるだけで、果たしてどのような結果がもたらされるのか、ということです。

 

実験の内容について

 

ここで、実験の内容について簡略にご紹介します。

・「記憶と学習のための実験」と称して自給4ドルで参加者を公募しました。
 (当初は)会社員、販売員、行員など、20~50歳までの一般男性が参加しました。

・実験は、
 「研究室の白衣を着た教授(=実験者)」、
 「記憶と学習のため、生徒に単語を教える先生役(電撃を加える人=被験者)」、
 「単語を学習する生徒役(電撃を受ける人=実は実験者側:サクラ)
 3人からなります。

生徒役になる人は、上述のとおり、実験者側の人:「サクラ」です。

・一見、クジ引きをして平等を装っているが、クジに細工がしてあり、必ず被験者が先生役となります。

・生徒が記憶した単語を間違えて答えると、先生は生徒に罰として電気ショックを与えます。

・当初、先生は、部屋を隔てて隣から電気ショックのスイッチを押すようになっていました。

・電気ショックは、生徒が間違える度に強くなります。
 電圧は15~450ボルトまであります。(もちろん実際には電圧をかけません)

・電気ショックをかける(=実はかかっていない)たびに、生徒からは、「かなり痛い」とか「具合が悪い」とか「実験に協力しない」とか、悲鳴を上げたり、最後の頃(345ボルト以上)は無反応となる、など続行を躊躇するような反応があります。

・教授は、実験をし続けるかどうか尋ねてきた被験者に対し、
 「続けてください」「実験のためには続けなければなりません」など定められた言葉を、順番とおり、静かに命令します。どの時点でも、被験者が自由意志で止めることができるようになっています。

もっといろいろな制約があるのですが、それは本を読んで頂くとしましょう。

 

このような条件下で、どのような結果が起きたのでしょうか?

 

普通に考えると、「具合が悪い」「協力しない」などと言われた時点で、中止を選択しそうですよね。

しかし、です。

全体の60%を超える人々が最高電圧である450ボルトまでスイッチを押し続けた(電気ショックを与え続けた)のです!

ただし、平然として行うのではなく、強い内心の葛藤とストレスを感じつつ、時には文句を言いながらも、最大レベルの拷問さえ加えたのです!

 

そして、こちらは案外知られていないのですが、この実験には、実に様々なバリエーションがあります。

例えば、被験者(電撃を加える人)と被害者役(電撃を受ける人:サクラです)との距離を変えてみたり、被験者と被害者役が同じ部屋にいたり、被験者が被害者役の手を取って(=接触して)電撃プレートに手を置かせる、などです。

また、各々の役の性別を変えてみたり、容姿を変えてみる(権威者らしくない、一見普通の人が権威者役をする)ことなども行ない、各々の実験で被験者がどのくらいの電圧までかけ続けるか、どのような発言をするかが、事細かに実験されたのです。

こちらも興味深い結果です。が、この結果については、ここでは書きません。本を読まれるのが良いのかな、と思います。

 

忘れてはならない大切なこと

 

さてここで、本記事で忘れてはならない大切なことがあります。

それは、「実験倫理」の話です。

この実験は、ウソをついて被験者たちを集め、彼らをだまして強い葛藤を引き起こすようなマネをさせた、という実験倫理の問題から、今では禁止されています。現在では、実験倫理をしっかり守ったうえで、様々な実験が実施されていることを申し添えておきます。

 

服従実験の本質

 

さて、本実験の本質は何なのか?

それは。

「人間とは、案外、主体的ではない」「状況によっては、権威の方が倫理・道徳を上回ってしまうことさえある」ということではないでしょうか。

本書末尾の、訳者による「服従実験批判」に見られるように、実験の設定に疑義を呈せられていることも事実です。

が、この、ミルグラムによる服従実験は、上記のような本質をかなりの程度ついた衝撃的な実験なのではないかと思います。

本書は、この内容に興味を持った方が、もう一歩深く背景、状況について知るための格好の書だと思います。

 

 

☆こちらの記事も読まれています!

よろしければ、どうぞ!

「積極的自由」が大切ということ:フロム「自由からの逃走」

内面に「規律が生まれる仕組み」:フーコー「監獄の誕生」

「時間厳守」は明治時代に作られたもの「遅刻の誕生」

人間とは、案外簡単に【権威に服従してしまう】:ミルグラム「服従の心理」

ゆとりの時間を取り戻す!:ミヒャエル・エンデ「モモ」

市場勝利主義の社会に警鐘を鳴らす:サンデル「それをお金で買いますか」

画一化・合理化が進む現代社会に警鐘を鳴らす:「マクドナルド化した社会」

「哲学本」紹介記事へのリンクはこちらです!

「心理学」などの記事へのリンクはこちらです!

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA