「カント入門」(石川文康氏):カント原書を読むための準備本・橋渡し本ともなります! -哲学者たちのおすすめ入門書-

 

今回は、更なるカント入門書をご紹介させて頂きます。

石川文康氏による「カント入門」です。

この本は、先の記事で紹介させて頂いた貫成人氏も推薦書として紹介されています。カントの批判書などの原書を読むための準備本、橋渡し本と言えるでしょうか。

と同時にこの本は、一応の予備的で教科書的な知識、すなわち枠組みくらいは知っておいた方が取っ付きやすいように思えます。貫成人氏の本と比べ、カント特有の専門用語が頻出しますので。

アンチノミー、アプリオリ、統覚、カテゴリー、定言命法、悟性などの用語について、一通り、その関係性を含め概略を知っている人が、もう少し詳しく学ぶために紐解くと良いように思います。例えば、先述の貫成人氏の「カント」を読んだ後に読む、とか高校の教科書をサラッと読んだ後に読む、などでも良いのではないでしょうか。

特に純粋理性批判を読む際の参考になる、と感じました。

 

構成について、もう少し詳しく書いてみましょう。

例として、第一アンチノミーの解説について取り上げてみます。

 

本書ではまず、第一アンチノミー「世界は空間・時間的に始まりを有する(有限である)/有さない(無限である)」の提示から始まります。

その後、矛盾、仮象(見せかけ)などの丁寧な説明を行ないつつ、その解決を通して、空間と時間が主観(感性)の性質であって「物自体」の性質ではないという「超越論的観念論」の証明に至る道筋は分かりやすくて見事だと思います。

人間の認識の仕組みの解説を通して、 -- よく言われるような -- 純粋理性批判の主題の一つである「神、自由、魂の不死などが理性で捉えられない」こと、すなわち理性の能力の限界についても分かりやすく提示されています。

 

本書は「新書」という形式をとっており、限られた紙面なので、その内容は純粋理性、実践理性が中心となります。

カントの思想に興味がある方は、手に取って見られると良い書です。

 

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