「認知の歪み」に対処する5つ(+α)の方法 -心理学を体系的に学びましょう!-

 

前回、ほとんど全ての人には、出来事に対する「認知の歪み」があることを書かせて頂きました。

 

ならば、この「認知の歪み」に対し、認知行動療法ではどのような回答をしているのか?

総じて言うと、それは「距離を取ること」「脱中心化すること」です。

具体的に説明させて頂きます。

 

・改めて時間を取り、根拠・理由を検討してみる

 

日常において我々は、自動思考的、すなわち瞬間的な印象に従って生活しています。浅い考えで生きているとも言えるでしょう。

このため、落ち着いて時間をかけて考える時間を持つ、ということですね。

 

・最悪のシナリオを考えてみる

 

物事が最悪の方向に進んでいった場合にどうなるか、を考えてみることです。

漠然と不安に感じているとき、最悪の場合を想定してみると、案外ひどくないことに気付きます。

私は、会社員時代にこのことを知っていたので、仕事の結果への最悪のシナリオを考えることで不安を払拭しようとしていました。整理されていない漠然とした不安を抱えながら仕事を進めるよりも、随分と効果があったように思います。

グループのメンバーに対しても、仕事を担当してもらうにあたって、よく「死にはせんよ。(広島弁で、「死にゃあせんよ」)」と言っていましたね。時々口調を真似されていましたので、恐らくメンバーの頭の中にもあったのではないかと思います。

 

・友人に起きたことだったら、何と言ってあげるか考える

 

認知の歪みが発生しにくいので、利害関係の無い友人に対して言ってあげることを想定した方が良いと思います。少し距離を置いて捉え直してみることができますね。脱中心化できます。

 

・友人だったら、何と言ってくれるか考える

 

こちらは逆に、友達だったら何と言ってくれるか、を考えてみることです。

 

・二分法(全か無か)、「べき」思考に気を付ける

 

認知の場面においては、全か無か、白か黒か、良いか悪いか、イチかゼロか、の発想をし勝ちです。認知は、自動思考であり瞬間的な思考なので、なかなか難しいことですが、常に自身が「二分法、べき思考」しやすいことを自覚することで、日常場面でも思い返し修正することができるようになっていくのではないかと思います。

アナログ的な「メーター」をイメージすることで、中間値があることを意識しやすいかもしれません。
以上が、認知療法の立場からの有用な考え方と方法です。

 

補足です。こちらはツール(=根拠・理由を検討するための道具)のお話です。

 

・5つのコラム法の思考を踏まえる

 

認知行動療法では、「セルフモニター」を重要視します。自身をモニタリングすることで発見・修正につなげます。「5つのコラム法」では、次の認知療法のモデルを応用します。

出来事・状況 → 自動思考 → 気分・感情 → 新たな思考 → 結果

出来事・状況、自動思考、気分・感情を振り返り、じっくりと考えることで、「では、どうしていけばよいのか」「結果、どうなるのか」を考えていく、ということですね。

書くことで頭の中が整理される、という効用もあると思います。

 

以上が、認知のひずみに対する対処法、ツールのお話です。

 

そして、話は少し変わります。

上記の方法を読んでみて、「理性・考え方・言語の世界で分かっていても、いざとなるとうまくいかない」という意見もあるかもしれません。要するに、理性・考え・言語を上回ってネガティブな思考が起きてしまう、ということですね。

これは私見ですが、恐らく、認知行動療法界でもこのような問題意識があったのではないでしょうか。

第二世代までの認知療法的な対処方法は、大いに効果が認められるというものの、理性レベル・言語レベルでの対応による限界もある、ということで、マインドフルネス療法など、言語を超えた、言語から距離を取る、という考え方・実践が起きてきているのだと思います。

 

それでも。

我々は、日常において、言語・意識を用いて生活している以上、第二世代の認知療法の考え方が有用だと思います。日常において「知っている」だけでも、自身に合ったものを取り入れるだけでも、有用だと思います。

さらに、言語を超えた世界を探究する意味で第三世代的な療法も大切なのだと思います。

前世代を否定するのではなく、前世代を含む「統合的」な考え方が大切なのだと思います。

 

 

 

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