貧困の実態を知ってもらいたい。 -「反貧困」(湯浅誠氏)2- 

 

さて、昨日の続きです。

 

湯浅さんが「反貧困」を執筆された動機は次の通りです。

 

姿が見えない、実態が見えない、そして問題が見えない。そのことが自己責任論

許し、それゆえ、より一層社会から貧困を見えにくくし、それがまた自己責任論

誘発する、という悪循環を生んでいる。貧困問題解決への第一歩は、貧困の姿・

実態・題を見えるようにし(可視化し)、この悪循環を断ち切ることに他ならない。

本書の執筆動機もまた、それ以外にはない。(p.87)

 

湯浅氏は、貧困とは自己責任(本人が意図的に選んだもの)によるものでなく、

「もっと複雑なものである」ということを何回も言及しています。さまざまな貧困状

態を理解すると、それが「いかに自己責任論と相容れないか分かる」とも言われ

ています。(p.82)

 

すなわち、自己責任論は「他の選択肢を等しく選べたはず、という前提で成り立

議論」であり、貧困とは「他の選択肢を等しくは選べない状態で総合的に溜め

を奪われた/失った状態である」ということです。これは、「五重の排除」という言葉

で表されていたと思います。

 

さて、以上が貧困の原因、社会の状況ですが、では、どうしたらよいのでしょうか。

 

湯浅氏は、2つの活動をしています(2008年時点)。

 

一つ目が、「もやい」での活動です。(p.126から)

 

もやいでは、「住所不定状態にある人たちに対するアパート入居時の連帯保証人

供」と、「生活困窮者に対する生活相談」が二本柱となります。 生活相談には、

生活保護申請同行や、当事者同士の相互交流、居場所作りという活動が含まれ

ています。

 

そこでは、「生活保護同行により、あっさりと生活保護を受けられる」という事例や

「居場所作りは、再チャレンジのための精神的、人間関係的な溜めを作るうえで

重要」という話があり、さらには、「95パーセントの方が連帯保証人に金銭的な

担をかけずにアパート生活を継続している」という事例も興味深いです。

 

最後の話は、アマルティア・センのマイクロファイナンスの話にも通じると思います。

湯浅氏は、この事実により、自己責任論は破綻しており、社会的、構造的要因が

あるかもしれない、とあくまで冷静な目で語られています。

 

そして、湯浅氏の二つ目の活動の柱は、

「反貧困たすけあいネットワーク」です。

 

組合形式の相互扶助の仕組みであり、「休業たすけあい金という給付金」と

「生たすけあい金という無利子貸付金」があります。(p.159)

この「組合形式の相互扶助の仕組み」は、福祉の現場に関わらず、社会保障、

経営などにも生かしていける素晴らしい考え方ではないでしょうか。

 

そして最終章にも印象的な言葉があります。

 

効率的なものが勝利する社会は、必ずしも自由な競争を実現しない。その効率

は、少なからぬ場合、資本投下によって生み出されているからだ。(p.211)

 

資本力を持つ者が有利である、そのような者が格差の上に立っている、

と言い換えることも可能なのでしょうか。言い過ぎかもしれませんが・・

 

ピケティの「21世紀の資本」の主題:格差につながる内容だと思います。

 

やはり、本気で活動している人たちの見識は、どこかでつながるのでしょうね。

 
 

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